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近代日本の陶磁は,明治期以降,万国博覧会への出品など様々な機会を通じて,西洋文明と新たに向かい合うことになりました。明治政府は官民一体となった殖産興業の一環として伝統工芸品,特に有田や薩摩焼など精巧な陶磁器を輸出の花形として西洋に送り出し,好評を博しました。一方,西洋からは,近代的な窯業の技術や生産方式を取り入れるなど大きな影響を受けます。そして,伝統的な制作方法を基礎としつつ,西洋の技法を応用することで,技巧を凝らした精緻な作品を生み出していきます。こうしたなかから,宮川香山,清風奥平が傑出した名工として,明治期の帝室技芸員に選ばれています。しかし,意匠の不毛が叫ばれるなど,独創的な活力の乏しさが目立ち,図案の改良を図る動きも活発になります。 大正時代に入ると,東洋陶磁を研究する古陶磁礼賛の風潮が生まれ,それを精確に再現しようとする動きが出てきます。また,大正から昭和にかけては,民衆の実用雑器に価値を見いだした民芸運動がおきます。そうしたなかで,東洋の技術や西洋の意匠を研究し,それを消化して独創的な作品を生みだした作家たちが登場するとともに,過去の形式にとらわれず創造的な表現を試みる個性豊かな作家たちが輩出するのです。 木展では,当館収蔵の陶磁作品37件を,〈西欧とのかかわり〉・〈伝統の革新〉・〈中国朝鮮への憧憬〉・〈置物の領分〉・〈個性の表現〉の五つのテーマのもとで展示紹介することにより,明治初期から約100年間,日本陶磁が展開してきた多様な造型表現の一端をうかがおうとするものです。 展覧会図録(PDF形式:37.8MB) |